本賞は、(公社)日本分析化学会液体クロマトグラフィー研究懇談会(LC懇)が「液体クロマトグラフィーを利用した研究分野で優秀な研究成果を挙げた者に授与する」と規定する褒賞であり、(一財)化学物質評価研究機構(Chemicals Evaluation and Research Institute, JapanCERI)の協力を得て2018年度より運用を開始している。2021年度は、本年8月末日を期限として候補者の推薦公募を行った。期日までに提出された候補者の推薦理由書、研究業績等を基に、選考委員会(2021910日)で審議した結果、()東レリサーチセンター所属の竹澤正明氏(推薦者:(株)島津総合サービス・三上博久氏)を授賞候補者として選出した。2021年度液体クロマトグラフィー研究懇談会第6回運営委員会(928日)において、選考委員長より上申された上記結果を協議した結果、竹澤氏への授賞が正式に承認された。竹澤氏の研究業績名は、「生体試料中医薬品の極微量質量分析法の開発」である。以下、授賞の対象となった研究業績等の概要を紹介する。

 竹澤氏は、LC/ MS/MSの実用化が始まった頃から、逸速く生体試料中の医薬品やバイオマーカーの定量分析に着手した。即ち、前処理にイムノアフィニティーカラムを利用する、ヒト血漿中プロスタグランジン誘導体の高感度分析法、並びにプロスタグランジン、アンジオテンシン、アミノ酸等の内因性バイオマーカー分析法の開発である。それらの成果は、多くの製薬企業を分析の立場からサポートし、各社の医薬品開発に貢献する所となった。LC/MS/MSは、原理的には高精度かつ高性能分離分析法ではあるが、その本来の性能が実試料の分析で直ちに発揮出来る訳ではない。竹澤氏は、LC/MS/MS分析における特徴的なトラブル、例えばキャリーオーバー、クロストーク、マトリックス効果等の問題に直面し、これらの問題を解決する事により、LC/MS/MS分析法の高度化を達成した。

 これらの研究業績に加え、竹澤氏はLC/MSの基礎と応用に関する自らの経験に基づき、学会・講習会などを通じて若手研究者を幅広く啓育し、生体試料中医薬品等の分析に携わっている研究者の底上げに積極的かつ継続的な努力を積み重ねている。竹澤氏は、LC懇の中核である運営委員として、LC懇の二大行事であるLC & LC/MSテクノプラザとLC- & LC/MS-DAYsにおいてLC基礎技術講座(現在はLC/MS技術講座)の講師、LC/MSの講師を長年務める一方、毎月の例会では度々最新技術を発表しており、LC懇にとっては不可欠の人物である。又、日本分析化学会(JSAC)においては、関東支部主催機器分析講習会「HPLC, LC/MSコース」の講師としても長年大きな貢献を続けており、LC懇会員に留まらず、広くJSAC会員に模範を示す姿勢は大いに評価される。更に、分析士試験解説書、LC/MS関連実務書などへの精力的な執筆活動により、多大な社会的貢献を果たしている実績も、CERIクロマトグラフィー分析賞授賞に誠に相応しい人物と評価された。

液体クロマトグラフィー研究懇談会・委員長 中村 洋


液体クロマトグラフィー(LC)研究懇談会は、2021年度のCERIクロマトグラフィー分析賞受賞候補者の推薦を受け付けております。LC研究懇談会会員で、標記候補者の推薦を希望される方は、下記の規程(抜粋)を参照の上、推薦書類提出先にお申し出下さい。受賞者には、LC懇の電子ジャーナル「LCとLC/MSの知恵」への業績投稿を行って戴きます。

第1条 本賞は、LCを利用した研究分野で優秀な研究成果を挙げた者を対象に、年1件以内に授与
    する。
第3条 受賞者の資格に年齢は問わないが、LC研究懇談会の会員である事が望ましい。又、受賞者の
    研究成果は、既印刷のもので、少なくともその一部が公益社団法人日本分析化学会の機関誌
    若しくは学術刊行物に掲載されたものである事を要する。
第7条 賞の授与は、LC & LC/MSテクノプラザにおいて行う。受賞者には、賞牌及び賞金(10万円)
    を授与する。

[注記]

  1. 提出書類:推薦者は、A4判サイズに横書きで記入した以下の4種類の書類(各1通)を2021年8月末日までに下記提出先に電子メールで送付する。
    ① 生年月日及び高校卒業以後の履歴書、②推薦理由書、③研究業績名(40字以内)及びその概要、④研究業績リスト:表題、全著者名(受賞候補者にアンダーライン)、雑誌名、巻数、掲載ページ数、掲載年をこの順に記載したもの、⑤その他、適当と思われる資料(1件)を提出しても良い。
  2. 推薦書類提出先:CERIクロマトグラフィー分析賞係
    [電子メールアドレス:nakamura@jsac.or.jp]