エムエス・ソリューションズ(株)
代表取締役
髙橋 豊

 私は群馬高専の田島研究室で質量分析(mass spectrometry, MS)の研究を始めて以来、群馬大学在学中を含め学生時代の4年間、日本電子在籍中の20年間、そしてその後今まで、質量分析一筋で仕事をしてきました。
 学生の時は、有機イオンのフラグメンテーション解析に関する研究を行っており、群馬大学で使っていたMS装置が日本電子製だったことが縁で、1990年に日本電子に入社しました。
 日本電子では、先ずLC/MSのアプリケーション開発を10年間担当しました。お客様との共同研究などを通じて学会発表や論文執筆を行い、2000年には群馬大学から工学博士の学位を授与されました。その後、新製品のLC-MSシステム開発に約3年間携わった後、LC-MSのアタッチメント開発を行い、最後にLC/MSのトレーニングを行う部署を経て、2010年6月に日本電子を退職、同年8月にエムエス・ソリューションズ株式会社を単身設立しました。
 私が日本電子に入社した1990年頃、日本にもESIイオン源を備えたLC-MSが導入され始めました。当時のESIイオン源は非常に不安定で、モニターで安定したイオンを観測することが一苦労でした。イオン源やMS装置の構造や機能を熟知していないと、とても使えない代物でした。
 現在のLC-MSは、その安定性や操作性の向上が著しく、MSの知識の殆どない人でも、簡単に測定だけはできるようになっています。
 しかし、装置のオペレーションを覚えて何とか測定だけできるようになっても、それはLC/MS全体の10%程度にしか過ぎないと、私は自身の長年の経験上感じています。それ以外の90%は、試料に適した前処理、測定条件検討、データ解析などです。これら分析技術全般は、MSメーカーのトレーニングでは教えてくれません。ではどうすれば良いか...
自分で学習するか、LC/MSのプロに教えを乞うことです。
 私がエムエス・ソリューションズという会社を設立したのは、LC/MS全般に関わる分析技術を伝えていきたいという理由からです。LC/MSのプロとして生きるための証の一つとして、LC/MS分析士を五段まで取得しました。分析士試験は、自分の分析スキルに対する習熟度を測るバロメーターになると思います。

(2016年3月23日 記)

プロフィール

髙橋 豊 Yutaka Takahashi LC分析士二段、LC/MS分析士五段
1990年3月群馬大学大学院工学研究科前期課程 修了
1990年4月日本電子株式会社入社
2000年群馬大学より工学博士の学位を授与
2010年8月エムエス・ソリューションズ㈱設立 代表取締役
横浜市立大学客員教授
趣味 トライアスロン、マラソン、ソフトボール、スキー