株式会社 総合環境分析 技術部
大塚克弘

 鎌倉の遺跡で「やぐら」というのを御存知でしょうか。ハイキングコースなどの山中で山肌に四角い穴が空いているのを見掛けた方もいると思います。全てではありません(石切り場もあります)が、その穴を「やぐら」と言います。「やぐら」は、「窟」、「矢倉」とも書き、鎌倉時代中期から室町時代中期にかけての横穴式墳墓です。その穴の中に、五輪塔、宝篋印塔等の石塔や地蔵菩薩等の石仏もあったりします。鎌倉には、2000~3000基あると言われ、殆どが正式に保存されていません。と言うことは、ほぼ鎌倉時代または室町時代からそのままの状態で見ることができます。土に半分埋もれた状態、木の根によって崩されていく状態など、時代と共に儚く、崩れていく状態を木々が生い茂るなか垣間見ることができます。山の中にたたずみ、その時代と共に変わりゆく儚さを感じるところに魅力を感じます。「やぐら」は、その時代、時代に何を見てきたのでしょうか。

 その「やぐら」を約10年前から、最初、当てもなくただひたすらに山の中に入り、獣道を通ったり、藪こぎをしたりなどをして探し回っていました。ただ、無鉄砲に探していたので、その日に見つからないときもあり、空しく帰る日も多くありました。ただ見つかったときの感動はまた格別です。そして、その後、見つけた「やぐら」のことが書かれてないか文献を調べていました。その内に意外と過去の文献や自治体による発掘調査を調べると「やぐら」の記述が多くあるのを知りました。それから「やぐら」について、場所だけではなく、歴史や宗教、思想などを勉強することにより、更に興味を惹かれるようになり効率良く探し求めることができました。





 さて、これからは、私の仕事の話に移りますが、弊社では環境水(河川、湖沼など)や工場排水、土壌、飲料水などの分析を行っています。この業種では公定法に基づいて測定を行っており、マニュアル通りに測定をすれば殆どの分析ができるようになっています。しかし、試料に依っては、夾雑物が多く分析が困難なものも少なくはありませんし、また、公定法にもはっきり決めていない箇所があり、そう言うところは各社の腕の見せ所となります。

 私自身も独学で勉強してきましたが、「やぐら」探しの様に、無鉄砲に勉強していて、決して効率良くはありませんでした。また、独学は独りよがりになる傾向があります。特に液体クロマトグラフィーは、環境分析において公定法に採用された歴史は浅く、尚のこと、知識や経験が要求されるようになりました。そこで、分析機器個別の資格試験LC分析士やLC/MS分析士を知り、受験することにしました。学会より販売している解説書を買い、勉強しました。段を追うごとに、それぞれの段階に合わせ、効率良く勉強することができました。また、LCやLC/MSだけの出題範囲ではなく、幅広い知識を試す出題もあり、勉強になります。「やぐら」探し同様、無鉄砲に探すのではなく、必要な知識を得て、興味を持って工夫してみることが仕事の効率に大きく役立つのではないのでしょうか。

 できれば、この業界で多く使われているGCやGC/MS、ICPなどの分析士もあると自分自身の勉強はもとより、教育訓練に役立つと思います。

(2019年4月22日 記)

プロフィール

大塚克弘 Katsuhiro Ohtsuka LC分析士二段 LC/MS分析士三段
略歴:日本大学農獣医学部農芸化学科卒
        1994年9月 株式会社総合環境分析入社
        環境分析、水道水分析、営業などを経て現在計量管理者
趣味:鎌倉の遺跡探索と案内、お酒、カラオケ