東洋合成工業(株)
小林宣章

 私は現在東洋合成工業株式会社という会社に勤務しております。当社は有機合成や精製技術を用いて電子材料、香料原料の合成および溶剤の蒸留精製などを行っております。主力製品である電子材料では主にフォトレジストと呼ばれるパソコンやスマートフォンに使われるICチップ を製造する際に使用される材料を製造しております。近年このICチップの高集積化によってパソコンやスマートフォンは計算速度のより高速化を果たしていますが、これはフォトリソグラフィーによる微細なパターンを形成させることによって達成されております。レジストメーカーではより微細構造を達成すべく日々レジストの研究開発がなされておりますが、当社ではそれらを構成するポリマーや光酸発生剤の効率的で且つ、より高純度での製造を行っております。そこで当社では各成分の製造の際に、有機不純物および金属含有量のコントロールを厳密に実施しております。

 私の学生時代の専攻は天然有機化合物の合成であり、その経験を生かすため、当社に入社しました。学生時代は「複雑な構造を有する天然物をどうやって合成するか?」が研究の面白みであり、困難なところでありましたが、現職では「化合物をいかに効率的に高純度で合成するか?」が鍵となります。そこで不純物対処へのアプローチとして1. 不純物を生成させない 2. 不純物の選択的除去の二つが挙げられます。両者に共通するのは不純物の構造が判明すると、どういった対策をすればよいのか道筋が立つという点です。したがって高感度であり、化合物情報を与えてくれるLC-MSが重要な分析機器となるのです。学生時代では合成によって得られた主成分の高分解能質量を知るためにLC/MS測定は行っておりましたが、現職では微量不純物の構造情報を得るためのLC/MS測定となりますので、LC部における分離の知識、MS部における効率的なイオン化および得られたMSスペクトルの解析が非常に重要となります。そこでより効果的にLC/MS分析を実施するにはより専門的知識が必要であると感じ、調べていくと日本分析化学会が主催する認証分析士制度を知りました。本分析士を取得することによって、よりLC/MSの分析知識が深められると思い勉強を始めました。勉強し始めると自分の知らなかった知識がたくさんあることを知り、実際の分析に活かすことができました。私は現在LC/MS分析士のみ保有しておりますが、今後はLC分析士にもチャレンジしていきたいと思います。

(2019年4月10日 記)

プロフィール

小林宣章, Noriaki Kobayashi 博士 (農学) LC/MS分析士四段
略歴:2011年3月 東京大学大学院農学生命科学研究科
                       応用生命化学専攻博士課程修了
        2011年4月 東洋合成工業株式会社入社
                        研究開発部にて材料開発に従事
現在は事業企画室
専門:有機合成化学、構造解析
趣味:ドライブ、音楽、映画鑑賞