一般財団法人 日本冷凍食品検査協会
横浜試験センター
佐野 勇気
私は(一財)日本冷凍食品検査協会という検査機関に所属しています。当協会は、1949年の創立以来、食品の輸出入に関わる試験・検査機関として食品産業の発展に資するとともに食品衛生の向上など公共の福祉に寄与することを基本方針として活動しています。日本の食生活は経済発展とともに豊かになって来ましたが、BSE、輸入農産物の残留農薬、食品の偽装事件、さらには放射線による汚染問題等「食品の安全・安心」に関する消費者の不安はまだまだ解消されていません。このような状況を受け、当協会は第三者検査機関として、食の安全・安心を守るために社会貢献して行きたいと考えております。
主な業務は、食品の輸出入時の検疫に係る製品検査の受託分析、食品施設の衛生検査・品質調査、HACCP・ISO等の取得コンサルティング、さらに、検査機関として長年培った技術を背景として、食品に携わる事業者・技術者のための食品表示、品質管理技術および細菌検査技術等の研修会・講習会を開催しております。
私が所属している技術開発課は、新規試験法開発や分析機器の導入検討といった仕事をしています。ここでは、業務を遂行する上で、LC/MSは基より、化学全般に関する知識が必要とされます。それまで公示試験法を中心としたルーティンワークに従事してきた私にとって、ここでの業務をこなすためには、知識面・技術面において相当のステップアップが必要であると感じており、配属後、正直焦りを覚えていました。そんな中、私は上司の勧めでLC懇談会に参加することになります。そこで様々な分野の方々の講演を聴き、情報交換会でお話をする機会を得て、分析士の試験というものの存在を知ります。そして、自分自身がもう一つ上のステージに行くために、分析士の資格を得る事は大変有意義だと感じるようになりました。2015年の10月に初めて例会に参加し、LC/MS分析士初段の試験が12月末でしたので、タイミングとしてもちょうど良かったと思います。
勉強を開始し過去の問題集を見てみると、LC/MS以外に、高校化学で学ぶような基礎的な問題も散見され、大学で有機化学や分析化学を専攻していた私ですが、これは相当な範囲の復習をしなければならないと思い知らされます。またメインのLC/MSに関しても、普段なんとなく理解していた部分が多く、今回の分析士試験が正しい知識を基礎から学ぶ良いきっかけになりました。原理に関するいい加減な解釈や間違った語句の使用など、自分が分析者として如何に未熟であったか痛感すると共に、勉強を通して自分が徐々にステップアップしていける喜びもありました。
現在LC/MS分析士初段所有者は約500人、分析士全体では約1500人だそうです。この資格が今後国家資格となり、権威を持つようになれば、我々受託分析機関にとってその必要性はより大きくなるでしょう。いつか「分析士の資格を持たない人には分析の依頼は出来ない」という時代が来るかもしれません。そのためにも、現状に慢心する事なくさらに高みを目指す必要があります。今後、分析士の資格を二段、三段、とレベルを上げていくために、日々精進していかなくてはならないという決意を新たにしました。
(2016年3月29日 記)
プロフィール
佐野 勇気 Sano Yuki LC/MS分析士初段
東北大学大学院生命科学研究科分子生命科学専攻活性分子動態分野修了
2008年入会、専門は残留農薬、動物用医薬品、カビ毒、重金属等
趣味:音楽、料理、資産運用