「虎の巻」から「龍の巻」へ

 昨年の11月、「液クロ虎の巻」、愛称「液虎(エキトラ)」を刊行した。本研究懇談会としては初めての書籍である。本書の初お目見えは、昨年12月3日・4日、大学セミナー・ハウス(八王子市)で行われた液体クロマトグラフィー研修会(LC-DAYs2001)であった。幸い、この会場も含めて読者の関心の高さは予想を超えるものがあり、1年足らずで3000部を印刷した。
 「液虎」は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の原理とノウハウを、約100問のQ&A形式で平易に解説したものであった。
 しかしながら、HPLCのユーザーは日本だけでも数十万人はいると推定される。従って、HPLCに関する有りと有らゆる疑問や悩みがあっても不思議ではなく、とても100問程度の解説では語り尽くせる筈がない。また、本研究懇談会の運営委員諸氏にあっては、初出版のヒットに気を良くし、その意気たるや頗る高いものがあった。このような状況に後押しされ、『毎年1冊。を合い言葉に、「液虎」出版の直後から第2集を刊行する計画を実行に移すこととした。即ち、本年春までに運営委員が問題(Q)を出し合い、4月には回答部分(A)の執筆担当を割り振った。その後、恒例となった1泊2日(8月26日・27日)の査読合宿で各人が推敲した原稿を慎重に検討・吟味した。
 本書の内容がほぼ固まった投階で出版元、製作担当と会合をもち、書名の検討を行った。色々とアイデアが出されたが、在り来たりな「液クロ虎の巻 第2集」では先細りであると思われたため、思い切って虎を龍に変え「液クロ龍の巻」とすることにした。元々、「虎の巻」は周の太公望の撰と称する兵法書「六韜(リクトウ)」に由来する。「六韜」は文韜・武韜・竜韜・虎韜・豹韜・犬韜の6巻60編から成るが、現在では魏晋時代に偽作されたものと考えられている。
 ここで、韜の字音は「トウ」、音読は「つつむ」、「ゆごて」であり、右側の旁、とう(字音はトウ)は、外枠の中に入れる、枠の中で捏ねることを意味する。韜はこれを音符とし、左側に韋(なめしがわ)を加えた字であり、かわを外に巡らせてその中に包みこむ意がある。やや細かすぎる説明になったが、要は「虎の巻」の出典が六韜であり、同じ出典から「竜の巻」を選び、竜を飾り字にした「龍の巻」を今度の書名に使おうという訳である。龍は想像上の動物で、古来縁起が良いとされる。本書が文字通り飛龍昇天のごとく、日本の津々浦々まで行き渡ることを願っている。
 今回の「液龍(エキリュウ)」の執筆には、運営委員に加えてLC-DAYs2001の参加者等、外部の方々にもご協力を戴いた。また、巻末には、読者の便に資するよう関係企業の製品等を資料編として掲載した。本文、資料編とも誤りがないように細心の注意を払ったが、不都合な点があれば是非お知らせ戴きたい。
 最後に、筑波出版会の花山 亘社長、悠朋舎(製作担当)の飯田 努社長、ならびに関係各位に感謝の意を表する。

平成14年10月
液体クロマトグラフィー研究懇談会委員長
中村 洋

執筆者一覧

赤星 竹男
伊藤 誠治
井上 剛史
大河原 正光
春日 喜雄
岡橋 美貴子
北村  栄
沓名  裕
黒木 祥文
小池 茂行
酒井 芳博
佐々木 久郎
住吉 孝一

千田 俊二
高橋  豊
瀧内 邦雄
竹内 豊英
立木 秀尚
塚田 勝男
冨澤  洋
長江 徳和
中田 文弥
中谷  茂
中村  洋(監修)
西岡 亮太
二村 典行

古野 正浩
坊之下 雅夫
星野 忠夫
本田 俊哉
宮野 博
村北 宏之
安野 和義
柳原 公庸
山本 隆裕
鎗田  孝
渡辺 勝彦
以上
(五十音順)

液クロ龍の巻 Question項目

1章 HPLCの基礎 -理論と用語-

  • 移動相の流速とカラム抵抗圧との関係は?
  • 極微量の流速を得るのに用いられるスプリッターの原理は?
  • ピークの広幅化をもたらす要因は?
  • カラムの長さ,内径と注入する試料の量の関係は?
  • カラムの内径を細くすればするほど分解度が上がる?
  • カラムの平衡化の基準の判断は?
  • 分子量の差で分離する方法のよび名は?
  • 換算分子量のずれの傾向の具体例は?
  • 絶対感度,濃度感度の意味は?
  • 電気クロマトグラフィーとは?
  • pH、pKaとはどんなもの?
  • HT分析とはどういう分析?また,条件設定のポイントは?
  • High Temperature HPLCとは?
  • 超臨界流体クロマトグラフィーとHPLCやGCとの違いは何?
  • 公定法でHPLCを一般試験法として採用しているものは?
  • 3種類のバリデーションの具体的な使い分けは?
  • 固相抽出におけるuの値は?
  • カラムの消耗や劣化によるカラム送液量への影響は?

2章 固定相と分離モード -充填剤,カラム-

  • 再現性よくHPLCカラムを充填する方法は?
  • データをみるときの留意点は?
  • オープンチューブカラムが市販されていない理由は?
  • モノリスカラムとはどんなカラム?
  • 前処理や分離ではない目的で使用されるカラムとは?
  • ピーク形状の異常の原因とその対策は?
  • 気泡を抜く方法はアカラムをからにしてしまった場合は?
  • 逆相シリカゲルカラムの炭素含有率,比表面積,細孔径は?
  • モノメリック,ポリメリック充填剤とは何?
  • 残存シラノールの性質はア
  • シリカ系逆相カラムの劣化はどのように起こる?
  • 保持が徐々に減少し,再現性が得られないのは?
  • C30固定相はODSと比べ,どのように異なっているか?
  • 試料負荷量の大きなODSカラムとは?
  • セミミクロカラムを使用するときの注意点は?
  • キャビラリーLC,セミミクロLCが感度的に有利である根拠は?
  • 微量試料の注入方法のメカニズムとは?
  • 試料容量を増加させて分析する方法は?
  • GPCはどこまでミクロ化が可能? ODS以外の逆相固定相の場合での保持の減少は?
  • 水系移動相でも保持の再現性の高いカラムは?
  • 有機溶媒の種類による保持の再現性は?
  • 塩の種類による保持の再現性は?
  • カラム濃度による保持の再現性は?

3章 移動相(溶離液)

  • カタログに表示の“高速液体クロマトグラフィー用”とは?
  • HPLCに使用する水は?
  • 混合後の容積が混合前の容積と一致しないのは?
  • 緩衝液を調製するさいにリン酸塩が頻繁に使用されるのはア
  • 再現性よく移動相を調製する方法は?
  • 移動相に,亜臨界水を用いた液体クロマトグラフィーとは?
  • カラムを平衡化させ安定した分離を行うには?
  • 逆相系でLC装置を使用後,願相系に切り換える手段は?
  • ゴーストピークを小さくするか影響を回避する方法は?
  • 移動相のみを注入したらピークが出た.原因は?
  • イオン対(ペア)試薬の種類,使用方法,注意点は?
  • イオンペアクロマトグラフイーの条件設定は?
  • イオンペアクロマトグラフィーでよく起こる問題は?
  • イオン対試薬を使用するとカラムの寿命は短くなる?
  • LC/MSやLC/NMRでもイオン対試薬を使用できる?

4章 検出・定量・データ解析

  • HPLCで使用される検出器の使い分けは?
  • UV吸収をもたない物質を分析するには?
  • 光学活性物質を選択的に検出できる検出器の種類は?
  • 検出波長を切り換えながら検出する方法は?
  • 蛍光物質の励起波長と蛍光波長の選択方法は?
  • 化学発光検出器を使用する場合,検出波長の設定は必要?
  • 測定法の開発手順は?
  • 絶対検量緑法,標準添加法,内部標準法の使い分けは?
  • ピペットやマイクロピペットでは定量分析を行うことができない?
  • データ処理機の取り込みスピードの影響は?

5章 HPLC装置

  • カラム本体を構成している部品の名称は?
  • 何故LCカラムに,移動相を流す方向が記載されている?
  • カラムの性能を評価する方法は?
  • カラムの接続のタイプは?
  • カラムを接続するさいの部品の名称は?
  • HPLCの配管にはどんな金属,樹脂が使われている?
  • HPLCの配管用の金属のものと合成樹脂のものとの使い分けは?
  • プレカラム,ガードカラムの使用目的,用温 また違いは?
  • メーカーごとにまちまちな圧力単位の換算法は?
  • 抵抗管や背圧管を取り付ける目的は何?
  • 分析中にシステム圧力が上昇する原因と対処方法は?
  • マニュアルインジェクターの使い方は?
  • カラム恒温槽のヒートブロックと循環式の長所・短所は?
  • HPLCの圧力限界の設定は?
  • HPLCのシステムに表示される圧力は流路のどの部分にかかる?
  • 実験機器は許容量いっぱいの設定で使用すると故障する?

6章 LC/MS

  • LC/MSイオン化法の原理と使い分けは?
  • LC/MSに用いられる分析計を選択するポイントは?
  • LCでMSを検出する利点と欠点は?
  • LC/MS分析に適したカラムサイズは?
  • LC/MSで使用できる溶媒は?
  • クロマトグラム上にスパイクノイズが現れる原因は?
  • LC/MSでバックグラウンドが高い理由は?
  • イオンサプレツションとは何?
  • 順相HPLCはLC/MSとして使用できる?
  • LC/MSに不向きな有機溶媒は?
  • GPCをLC/MSに使うことはできる?
  • イオンクロマトグラフィーをLC/MSに使うことは可能?

7章 前処理

  • 試料や移動相の除粒子用フィルターを選ぶときの注意点は?
  • 膜を使って簡単に試料の除タンバタや濃縮ができる?
  • 測定対象物が容器等へ吸着するのを防ぐための対処方法は?
  • 固相抽出カラムでの抽出法の長所,短所は?
  • ポリマー系固相抽出カラムの特徴は?
  • 前処理後の抽出液の乾燥法の長所・短所は?
  • 固相抽出96wellプレートの長所・短所は?
  • 固相抽出の自動化とは何?
  • 超臨界抽出を分離分析測定の前処理として利用する方法は? 軽くたたいて使用するとロット間差が小さくなるのは本当

8章 応用

  • タンパク質をHPLCで扱う場合の一般的JL・得は?
  • HPLCでタンバタ質を変性させずに分取するには?
  • アミノ酸のキラル分離を行うときの誘導体化試薬は?
  • 糖類の分析を行うときのカラム選択法は?
  • ダイオキシンやPCBなど有害物質はどのように処理する?
  • 光学異性体を分離するときの手法は?
  • d体の後ろに溶出するJ体のピークの考量法は?
  • 光学異性体を分離しないで異性体存在比を測定する方法は?

資料編

  • 三和通商株式会社
  • 関東化学株式会社
  • 日本分光株式会社
  • ジーエルサイエンス株式会社
  • 日本電子ハイチツタ株式会社
  • 株式会社住化分析センター
  • 日本ウォーターズ株式会社
  • メルク株式会社
  • 野村化学株式会社
  • 横河アナリティカルシステムズ株式会社
  • 株式会社日立ハイテクノロジーズ
  • 和光純薬工業株式会社
  • 株式会社島津製作所
  • 東京化成工業株式会社
  • 林純薬工業株式会社

虎の巻シリーズ

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ちょっと詳しい液クロのコツ(前処理編)

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ちょっと詳しい液クロのコツ(検出編)

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液クロ実験 How to マニュアル

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動物も扱える液クロ実験 How to マニュアル

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分析士 解説書

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